「ほたる〜!」とつい口を尖らせ農協の帽子をかぶりたくなるような富良野の風景をぬけると道は徐々にくねり始め、やがて金山ダム
の上流へとたどり着いた。
さらに上流へと進むと“幾寅”という町があり、そこはあの「鉄道員(ぽっぽや)」 の舞台になった町で、いまだに映画のセットがそのまま残されており、ポツポツと観
光客がやってきては去っていった。というのも、そのセットの目の前にある食堂で昼 食を取りながらしばらく作戦会議をしていたからだ。メニューには、当然のように健
さんが食べたという、名前は忘れてしまったが“健さん**セット!”があるわけだ。 以前健さん好きの友人と来た時、彼は涙を流して喜んでそれから“健さん談義”を1時間も話し始めたほどで本当に健さん好きにはたまらない町のようである。
その町にある民宿を予約し、昼過ぎにようやく釣りの始まりとなった。
まずは、金山ダムをバックウォーターからイッパツ大物をと、釣り上ったのだが雨の影響で水量が多く遡行が厳しい。しかも、出てくる魚は小さい。「だめですね。この
雨できっとかなり上流に移動いているんですよ。場所を替えましょう!」奥ちゃんが言った。奥ちゃんとは、もともと東京にいた友人で、いつのまにか北海道に住んでし
まいガイド業まで始めてしまったという根っからの釣キチである。その奥チャンが言 うには先週はこの辺りでも,かなり釣れたそうだ。しかし金山ダム上流は、源流部まで
堰堤もなく魚の移動は自由自在、一晩にいや一雨で?一雨で一晩にが正解なのかもしれないが、一気に5〜6キロも移動するそうだ。そこで、おもいっきりの移動を決行。数キロ上流まで移動した。そこで、時折流れてくるラフティングのボートを交しな
がら尺物を何匹かキャッチした。それでも、目指す大物は現れない。ここでもすでに ヒグマの気配十分であった。実際、ひと月ほど前に70歳のおじいちゃんが襲われ、眉間にパンチを浴びせ九死に一生を得たポイントより上流にいた。
さらに上流をめざす。 蝦夷鹿が悠々と草を 食べる光景を横目に車を走らせる。さすがの奥ちゃんも落ち着かない。車を止めると、
「ちょっと待ってください!」といってクラクションをしつこいくらいに鳴らす。 “そんなに鳴らすの?”と思うくらいに「プープープ〜・プップップ〜!!!」であ
った。訳を聞くと“車の音にパニックになった熊は車から降りた人間を襲うことが多 いという。だから、やばいところまで来たら車を止めてもすぐには降りずクラクショ
ンを鳴らして様子を見るのだ”という。実際そんなケースで襲われた人は少なくない という。そんな話を聞いた私はかなり怯えていた。だが、林道から見える流れはもう
たまらない!よだれが出そうなくらいだ。
「行きましょう!」私が言った。
空知川2に続く・・・
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